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お知らせ

疲労しやすく血色のすぐれない方に~当帰建中湯~

当帰建中湯は体力虚弱、月経痛、下腹部痛、痔など使われる漢方薬

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は、体力虚弱で、疲労しやすく血色のすぐれない方に用いる漢方薬で、古典「金匱要略」の婦人産後病篇にも登場する処方です。処方名の「建中」とは弱った胃腸を立て直すことを表し、冷えや下腹部の痛みに使われる漢方薬です。

漢方医学の気血水の概念のうち、血はおおむね現代の血液のはたらきをもつほか、気の通り道となる、気を養うというはたらきもあるとされています。気血水は互いに連動するため血の異常、たとえば血が不足した(血虚)状態は他の症状を引き起こす場合があります。気が不足した状態(気虚)はそのひとつです。

当帰建中湯はこの血虚、気虚のときに使用する漢方薬です。もとの金匱要略の条文では産後の婦人に用いることが記されています。つまり血が不足することによって起きる腹部の刺痛、呼吸が浅くなる、腹部から腰背にかけてのひきつるような痛み、痛みと脾胃が虚したことで飲食ができない状態の治療に用いていたようです。以上の性質により産後の腹痛以外にも、虚血性の症状(月経困難、下腹部痛)、虚証の下部出血またはうっ血(痔出血、痔核)、腰痛、背痛などにも使われます。虚証の方に向いた処方です。

当帰
▲当帰(トウキ)

当帰建中湯の構成生薬と使い分け

当帰建中湯は気血を補う6種の生薬(当帰、桂枝、生姜、大棗、甘草、芍薬)から成り立ちます。虚労性の症状に用いられる「小建中湯」(しょうけんちゅうとう)から膠飴(こうい)を除いて当帰を加えたもので、小建中湯よりも血を補うはたらきが強くなった処方です(虚労が強い場合は膠飴を加えることもある)。
小建中湯はからだ全体の疲労性からくる不定の症状や血熱(ほてる感じ)、頻尿などが見られる場合に向きますが、当帰建中湯はどちらかというと局所性があり、ほてりなどはあまりなく、腹部を中心とした痛みがみられる場合に対して適しています。

婦人薬として知られる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は貧血傾向で疲れやすい方に使用される漢方薬で、当帰建中湯と類似していますが、当帰芍薬散は「冷え」の症状がより強い場合に向いています。また、当帰芍薬散は茯苓、白朮(蒼朮)、沢瀉という水の滞りを改善させる生薬も含むため、めまいやむくみ等の水証系の効能も持っています。冷えや水証がなく、より虚弱で腹部などの痛みが強い場合は当帰建中湯の方が適しているでしょう。

当帰建中湯はうっ血による痔、痔の痛みにも使うことができます。

同じような症状に使用する漢方薬でも、症状の種類や程度、体質に応じて使い分けることで効果を発揮します。漢方薬は医師や薬剤師等に相談し、自身に合ったものを適切に使用することがよいでしょう。

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