気分がふさぐ、喉のつかえ感がある不安神経症などに用いる半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安神経症によく使われる半夏厚朴湯
半夏厚朴湯は、体力が少し落ち気味の方で、気分がふさいだり、咽喉・食道の異物感があるとき、動機、吐き気、めまいや、それに伴って不安神経症、神経性胃炎、つわりなど様々な症状に使用される漢方薬です。古典では、金匱要略「婦人雜病編 第五条」にその記述があります。
「婦人、咽中に炙臠有るが如きは、半夏厚朴湯之を主る。」女の人ののど(咽喉)に炙った小さな肉片が引っかかっているような感じがする者は、半夏厚朴湯が主治するとの意味です。
気の通りが悪くなり咽のあたりに停滞することで(気滞)、咽頭部の異物感が起こることがあります。これを咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)といいます。気の巡りが悪いと気分がふさいだり、不安神経症になる場合があります。また、胃に水が停滞することにより気が逆上し、吐き気や咳の症状が起こることもあります。半夏厚朴湯は気の流れを良くし、のどから胃の余分な水分を取り除くことによりこれらの症状を改善したり、その他の様々な神経症状へ応用されたりします。
神経症に用いる漢方薬は様々あり、例えば加味逍遥散(かみしょうようさん)も精神系の症状に用いられることがあります。半夏厚朴湯と比較して加味逍遥散は、より体質虚弱の婦人やのぼせ感、イライラが強い場合に適しています。このように漢方薬は体質や症状に応じて使い分けるとよいでしょう。
気がふさぐことにより、動悸やめまいといった症状も現れることがあります。こうした場合にも半夏厚朴湯が使用できます。動悸やめまいといった症状には苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などの方剤も用いられますが、半夏厚朴湯は不安感がより強い場合に適しています。
半夏厚朴湯は、つわりや不眠にも用いられる
半夏厚朴湯はつわりにも使用される漢方薬です。妊娠中に気が発散できないときや、気が上逆し吐き気が起こる場合などに有効です。つわりに対しては、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)の処方もあります。いずれも茯苓を含む方剤ですが、半夏厚朴湯は吐き気の他に不安神経症や不眠などをともなう場合に適しています。その他にもつわりに使用される漢方薬はありますが、同様に不安など精神症状もある場合は半夏厚朴湯が向いています。<構成生薬>
半夏…心下の停水を去り、痰の除去、咽の異物感の改善。また胃気の逆上を緩和し、吐き気を治める。
茯苓…余分な水分を捌くことにより水滞を改善する。
厚朴…気のめぐり、通りを良くすることで気滞、腹満、胸満などを改善する。
生姜…胃を温め胃気の逆上を緩和し、吐き気を治める。
蘇葉…気のめぐりを良くし気滞の改善、鬱気発散する。