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冷えや痛みに用いる漢方薬、当帰四逆加呉茱萸生姜湯と桂技加苓朮附湯

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)と桂技加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)は、冷えや痛みに関連する症状に使用できる漢方薬です。本コラムではそれぞれの特徴をご紹介いたします。


①手足の冷え、下肢や下腹部の痛み、しもやけには当帰四逆加呉茱萸生姜湯

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、中国の後漢時代に張仲景という人物が編纂した古典「傷寒論」を原典とする漢方薬です。

「当帰四逆湯」の薬方に呉茱萸、生姜2つの散寒薬を加えた9種類の生薬からなり、古来より疝(せん)と言われる、冷えによって引き起こされる頭痛、下腹部痛、腰痛、女性であれば月経痛などの疼痛疾患や、しもやけ等の寒症に対して用いられる漢方薬です。冷えの刺激により腹痛が起こることを寒疝(かんせん)ともいいます。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は中国古典の「傷寒論」の厥陰病(けっちんびょう)篇に、「手足厥寒、脈細にして絶せんと欲する者、当帰四逆湯之を主る。若し其の人、内に久寒有る者、当帰四逆加呉茱萸生姜湯に宜し。」との記述があります。手足が強く冷え、脈が細く絶えそうで触れにくい人は当帰四逆湯が主治する。もしその人の体内に長い間深い冷えが留まっている人なら当帰四逆加呉茱萸生姜湯がよい、という意味です。

気血水のうち、気には体を温める(温煦)はたらきがあり、気が全身をめぐることで体温が保たれます。気は血の中に入って活動的になり全身をめぐるため、気が不足すると(気虚)血が流動せず、冷えや冷えにともない下肢・下腹部の痛みも生じます。また血が不足しても(血虚)冷えを生じます。これらはどちらかというと女性に多い症状です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、脾を温め、不足した血を補う働きによりこうした症状を改善します。

冷えによって手足の末梢に血行障害が起こると、しもやけになる場合があります。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えが原因のしもやけにも効果を発揮します。血が滞って(瘀血)しもやけが起きている場合は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの駆瘀血剤を使用、あるいは併用する場合もあります。

当帰芍薬散も冷え性の女性に使われる方剤ですが、めまいや浮腫といった水毒を伴う場合により向いています。また、同じく冷え性の方に使われる当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は、手足よりも腹部の痛みが強い場合に用いられます。四肢の冷えによる痛みが強い場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯が適しているでしょう。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成生薬

当帰、芍薬…補血・活血。不足した血を補い、血のめぐりを改善する。
桂皮…温経散寒、止痛。冷えを取るほか、当帰、芍薬とともに血をめぐらす。 木通…利水作用により心下の停水を取り除く。また当帰、芍薬とともに血をめぐらす。
細辛…散風祛寒(散寒)。外邪による寒冷を発散する。
甘草、大棗…ともに補気し、気虚に伴う冷えを改善。
呉茱萸…温経散寒、止痛。生姜とともに冷えと冷えに伴う痛みを改善。
生姜…脾胃を温め理気する。呉茱萸とともに冷えと冷えに伴う痛みを改善。

冷え性イメージ_当帰四逆加呉茱萸生姜湯_桂枝加苓朮附湯

② 手足の冷え・こわばり、関節痛、神経痛には桂技加苓朮附湯

桂技加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)は古方派・吉益東洞の「方機」を原典とした、手足の冷えやこわばり、関節痛、神経痛などの症状に用いられる漢方薬です。同じく吉益東洞の経験方の桂技加朮附湯に茯苓が加わった処方です。

処方構成では、「桂枝湯」に茯苓、白朮、附子が加わっており、桂枝湯証のような体力が少ない虚証タイプの方の、寒湿による四肢の痛みやしびれ(寒湿痺)、尿量減少や動悸、めまい等の水毒症状が起きた状態に効果を発揮します。

体に風、寒、湿、熱などの外邪が侵入して四肢の関節や筋肉に痛みが生じることを痺証(ひしょう)といいます。なかでも寒が原因で気や血のめぐりが悪くなったり、湿が原因で関節に腫脹が起こったりすると節々に痛みやこわばりが生じます(不通則通)。
こうした場合、気温が下がる冬期に痛みが増悪することもあります。また原典にも水滞の症状の者や筋肉の痙攣に用いることが記されています。桂技加苓朮附湯は気や血をめぐらせ体を温め、余分な湿を取り除くことで、こうした関節痛、神経痛を改善させます。

同じく冷えによる痛みには当帰四逆加呉茱萸生姜湯も使われますが、こちらは四肢の冷えが強く、血虚なども見られる場合などに向いています。手足が冷えてこわばる場合、神経痛の場合、めまいなどの水毒症状が見られ、虚弱体質で脈も沈んでいるような場合などは桂技加苓朮附湯がより適しているでしょう。

桂技加苓朮附湯の構成生薬

桂技加苓朮附湯は8種類の生薬から構成されます。
桂皮…気、血をめぐらせ冷えや水滞を取り除く。
芍薬…補血、活血。血のめぐりを良くすることで冷えに伴う痛みを改善。
大棗…甘草、生姜とともに胃を整える。
生姜…胃を温め機能を整え、脾を強化する。
甘草…不足した気を補う、また胃を整える。
白朮…脾の働きを整え、茯苓とともに水をさばく。
茯苓…腎からの利水を促し、水毒にともなう症状を改善する。
附子…経絡を温め血の通りを良くすることで痛み、しびれを改善する。

漢方薬は、体質や症状の程度などに合わせて使用するものですので、医師や薬剤師等に相談し、適切に服用することがよいでしょう。

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